熊本。
僕は日本料理店のバイトを辞めた。
板長さんに重々お礼を言った。
志乃さん『辞めても飲みに来てよー』
志乃さんに会ったのはこれが最後だった。
そして熊本へ。
初日は現場の下見だった。
僕はアキラ達とは別で社員さんの手伝いだったので少し残念だった。
早く終わらせて宿舎に戻ってアキラと今後の話をしたかった。
宿舎は旅館で5人部屋だった。
風呂は温泉。食事は美味く最高だったが5人部屋っていうのが後々僕を苦しめた。
やっと初日が終わりアキラと温泉に入った。
僕『どうする?』
アキラ『今夜行っちゃう?』
僕『今夜?』
アキラ『夜も下見しなきゃ(笑)』
僕『だよね(笑)』
僕とアキラは夜ご飯を食べてバスに乗り夜の街へ繰り出した。久し振りになにかこう胸の奥底から燃え上がるような熱いものを感じた。
全く飲んでいないのに僕らのテンションはかなり高かった。
僕は事前にどの店に入るか決めていた。
出来れば安くてそれでも女の子の質は落ちない店。
僕は『Y』という店を選んだ。
飲み放題 1セット(60分)
20時~21時 ¥4000
21時~22時 ¥5000
22時~24時 ¥6000
女の子のドリンク料金 ¥1000~
指名料金 ¥1000
こんな感じの店だった。
地元のジュンコが働くクラブは飲み放題¥5000円(70分)だったので田舎の高い店が熊本のキャバクラでは
リーズナブルな店という感じだった。
僕もアキラも沖縄で色々学んでいたので以前と比べて落ち着いていた。
とにかく今夜は延長しない事と指名しない事を決めた。僕らは店がオープンしてすぐに店に入った。
その日は女の子のドリンク料金がいらないキャンペーンをしていたのでオープンから割りとお客さんが多かった。
『いらっしゃいませ~』
すぐに女の子がついた。
僕らは出勤間もない女の子を必死に盛り上げようと頑張った。3回くらい女の子が入れ替わっただろうか。ボーイが延長するか会計するか聞いてきた。
僕とアキラは目を合わせて確認した。
『延長で!』
結局僕らは指名しないまま延長終了まで過ごした。
貰った名刺は5、6枚だった。
帰りは電車に乗り旅館近くのラーメン屋で名刺を並べて意見交換をした。
この時間がけっこう楽しい。
旅館は5人部屋だったので部屋では話出来ない。
僕らは日付が変わる頃に御開きにした。
この頃のケータイにはショートメール機能が付いていたが僕はジュンコがバイトが終わる頃まで起きていてジュンコに電話をした。
後ろめたい事があるとフォローする。
こういう行動が逆効果だとは微塵も感じていなかった。
翌日の作業はさすがにこたえたが僕は『Y』に行き名刺の中から唯一顔と名前と話した内容が一致した『雪乃』ちゃんとまた会う為に頑張った。